COLUMN
健康コラム

05紫煙の誘惑

2024/10/15

農作業の合間に一服。いかにも美味しそうなタバコのコマーシャルが昔ありました。でも最近は愛煙家にとって厳しい状況になってきています。今回はタバコの効罪についてです。

タバコは本当に発ガン作用があるのでしょうか。

タバコの有害物質の代表は、ニコチン、タール、一酸化炭素、アンモニアです。そのうち発ガン作用が明らかに証明されているのがタールです。山極博士がウサギの耳に根気強くコールタールを塗りつけて世界ではじめてガンを人口的に作ったのは有名な話です。またロンドンの煙突そうじの職人に陰のうガンが多発したのは、煙突の中のススやタールが原因と考えられています。
日本人のガンの中で最も多いのは今や肺ガンです。その原因の70%はタバコであると言われ、喫煙者は吸わない人の4.5倍も肺がんになる危険があります。
その他口腔、咽頭ガンは2.9倍、食道ガン2.2倍、更にノドにできる喉頭ガンに至っては32.5倍の確立でガンが発生します。
ガンばかりでなく、タバコにより気管支炎や肺気腫などの慢性呼吸器疾患になり易くなり、脳梗塞や心筋梗塞の原因となる動脈硬化の危険因子のひとつにタバコは挙げられています。また足の動脈が細くなって歩けなくなる慢性閉塞性動脈硬化症(ASO)という難病は喫煙と最も関係が深く禁
煙が不可欠です。そしてニコチンは、全身の血管を収縮する作用があり、心臓や他の臓器に
も負担をかけます。このようにタバコの健康に及ぼす害は世界的に認められており、先進国の
喫煙率は年々低下する傾向にあります。タバコの箱にもカナダでは「喫煙は、あなたを殺します。」と、イギリスでは「タバコは確実に健康を損ないます」とはっきりと表示されています。一方日本では「タバコの吸いすぎに注意しましょう。」というやわらかな表現であり、タバコのコマーシャルが公認されていたり、タバコの自動販売機が街にあふれていたりで、男性の喫煙率は50%以上と先進国の中でト
ップです。最近日本人女性や未成年の喫煙者が増加しているのも問題になっています。
ところでタバコの煙にはタバコを吸って口に入ってくる煙(主流煙)と火のついたタバコの先から立ち昇る煙(副流煙)2種類があるのは御存知でしょう。
タバコの有害物質の殆どは主流煙よりも副流煙に多く含まれています。アンモニアが46倍、一酸化炭素は4.7倍、発ガン物質のタールは3.4倍、ニコチンは2.9倍ですから、喫煙者よりタバコを吸わない周囲の人に対して被害が大きいことを知る必要があります。1日20本以上タバコを吸う人の妻は、2倍近く肺ガンになり易いと言われており、離婚問題も起きています。
結局の所健康にとってタバコは「百害あって一利なし」と言えます。

しかしタバコをやめるのは難しいですね。

喫煙者の7割はできたらタバコをやめたいと考えています。しかしながらタバコに含まれているニコチンは依存性(習慣性)が強く、禁煙の成功率は高くありません。禁煙してニコチンが切れるとイライラしたり頭痛が起こったり、眠れなくなったりという症状(離脱症状)が起きて、つい一服とやってしまうのです。
最近このようなニコチン依存状態から離脱を助けるニコチン置換療法が開発されました。
これはニコチン入りのガムや、ニコチン入りの貼り薬を皮膚に貼りつけて、
血液中のニコチン濃度を一定に維持し、離脱症状を柔らげようとするもので、これら補助薬の利用により禁煙成功率が著しく高まっています。
ここでは当クリニックで勧めているニコチン貼布療法を御紹介します。貼り薬は一日一枚を肌に貼るだけで良く、ニコチンガムと較べて安価で便利です。禁煙を思い立ったら早速受け付けに申し出て下さい。思い立ったが吉日です。貼り薬にはニコチンの量によって大中小の3種類があります。
1日26本以上、朝起きて30分以内にタバコに火をつける人はニコチン依存度が高いと考えられますので、最初の4週間はの貼り薬を用います。丸1日で貼り変えますが、カブレる人もいるので貼る場所をずらした方がいいようです。離脱症状のピークは禁煙後2~3日ですので、そこを乗り越えればしめたものです。4週間後には貼り薬をに更に2週間後にはに変えていき、8週間で貼り薬を終了します。
1日60本吸っていたGさんも最近この療法を行い1ヶ月が過ぎましたが、心配していた離脱症状も殆どなく、継続して禁煙中です。Gさんは胃腸の調子も良くなって胃薬がいらなくなり血圧も下がり始めたと喜んでいます。顔色も良くなり舌にべっとりとついていた黄色い苔もなくなっていました。

自分の健康は勿論、家族、周囲の人達のためにも禁煙宣言を行いましょう。

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