私たちの周りの自然が年々少なくなっていますが、我が尾道は海あり山ありとまだまだ捨てたものではありません。ちょっと奥へ行けば薬になる植物がいくらでも生えています。
今回から漢方薬の成分として用いられている身の回りにある生薬を取り上げて紹介します。
第1回目は葛(クズ)の根の葛根です。昔、子供のころ、風邪を引いたらお婆さんがクズ湯を作って飲ませてくれたものです。クズ湯はクズの根を乾燥させて水でさらした粉(クズ粉)を湯に溶かしたもので、これを飲むと体が暖まって、しっとりと汗をかき翌日にはスッキリと風邪が治っています。葛根を主薬とする漢方薬な有名な葛根湯があります。
昔からヤブ医者の代表として何にでも葛根湯を処方する葛根湯医者が有名です。葛根湯は風邪の初期で発熱、悪寒があり汗がなく、首筋や肩がこわばった時に非常によく効きます。
また葛根湯は肩こりやムチ打ち症に用いられるばかりでなく、はしかや蕁麻疹、感冒性の下痢などにもよく効きます。葛根湯医者は実は名医だったかも知れません。
葛根湯は主薬である葛根の他、麻黄、桂枝、芍薬など7種類の生薬で作られています。このように漢方処方は複数の生薬を組み合わせることによって、有効性を高めて、副作用を減らすという工夫がこらされています。
西洋薬の風邪薬が、咳や鼻汁は止まったが口が乾いたり眠くなったりと不快な作用があるのに対して、漢方の風邪薬は気持ちよく治るという長所があります。
また悪寒や発熱の激しいものには麻黄湯、鼻汁が強いものには小青竜湯、寒さだけで熱かないものには麻黄附子細辛湯といったように、レパートリーも豊富です。
引き始めたらまず漢方の風邪薬を試してみたらどうでしょうか。