食傷の病あらば、飲食をたつべし。
惑いは、食をつねの半減にし、又は三分の二減ずべし。
・・・魚鳥の肉、魚類のひしは、生菜油の臓物、ねばき物、
こはき物、もちだんご、作り菓子、生菓子くらふべからず。
『養生訓』第三巻
師走の声をきくと、胃腸が悲鳴をあげる時期の到来です。
忘年会、クリスマス、打ち上げ、正月、新年会・・・、この時期は、楽しみがたくさんある反面、ダイエットをしている人や生活習慣病のある人は、あきらめや後悔を何度か感じてしまう時期でもあるのではないでしょうか。
貝原益軒は『養生訓』の中で、食べすぎれば胃腸の運動も消化液の分泌もへり、胃腸の中で腐敗や発酵がおこり、胃腸をこわして(食傷)して病気になってしまうので、食欲は性欲よりもはるかに害が大きいと言っています。
では、食べ過ぎたときはどうするか。絶食するか、平常の半分か三分の一にし、魚肉や天ぷら、固いもの、甘いものなど食べないこと。
これは、経験的にも誰もが知っていることではないでしょうか。しかし実際は、「ごはんの時間だから」 「食べないと動けないから」 「用意されているので(残っているので)もったいなくて」 「まわりの人が心配するから」…などなど、食べるためのいい訳は、皆さん、じつにたくさん
持っていらっしゃるようで、『だから、この時期は太っちゃうのよ…』と、ため息混じりにつぶやいていらっしゃいます。
食べ過ぎた次の食事は、思い切って食べないようにするのが正解です。食べ過ぎると胃や胸がむかむかし、それを治そうとして、更に何かを食べて解消しようとしがちですが、絶食してじっとしていれば薬など飲まなくても回復するものです。(ただし、胃腸の病気がある人や糖尿病の薬を使っている人は先生に相談して下さいね。)また、お腹が本当にすいていないまま食事を摂る習慣を続けると、摂食中枢(満腹感や空腹感を感知する器官)が狂ってしまい、沢山食べても満腹感を感じられず、知らず知らずのうちに食べ過ぎて太ってしまう体質になりますのでご注意を。
普段の食事は腹六~七分にし、次の食事の前にはお腹がすくくらいにするのが一番ですが、ご馳走を食べる機会はおいしく食べて(…と言って、たくさん食べろということではないですよ。少量を味わって食べるコツを身につけてください。)、その後は、しっかり胃を休めてあげましょう。
栄養士 木下美由紀