茶菓子・後段(デザート)は分外(余分)の食なり。
少食して可也。過すべからず。
もし食後に小食せんとおもはば、かねて飯を減すべし。
「養生訓」第三巻より
養生訓の時代には、菓子やデザートといえば、もっぱら砂糖やでんぷん主体としたものが中心で現在のように脂肪分を多く含む洋菓子やスナック菓子はほとんど無かったため、一番心配だったのは糖質の摂り過ぎによるビタミンB1不足でした。ビタミンB1は糖質をエネルギーに変える為に必要なビタミンで、不足すると神経細胞でエネルギーをうまく利用できなくなり脚気を起こします。脚気は、全身倦怠感、アキレス腱反射の低下、軽度の知覚麻痺などの症状からはじまり、進行すれば知覚、運動麻痺が高度になったり、一方では循環機能不全に陥り、ついには死に至る恐ろしい病気です。
わが国では白米を主食としていたため、かって脚気は一大国民病で、1923年(大正12年)、その死亡数はピークに達し、年間約27000人を数えました。しかし、その頃、脚気の原因はビタミンB1不足の欠乏により生じることが明らかになり予防や治療ができるようになりました。
ご飯を食べうどん、そば、菓子、砂糖などを暇さえあれば食べていては、糖質の摂り過ぎでビタミンB1不足がおこり、これが続くと脚気になる。
その原因や病気については、ほとんど明らかになっていなかった時代にも、益軒は、「もし食後に小食せんとおもはば、かねて飯を減ずべし」と、食べ方を調整するよう戒めています。また、茶菓子やデザートは余分の食。ダイエットに関心がある人にとってはイタイ言葉ですが、もう一度肝に銘じておきたいものですね。
近年、再び脚気様の症状を訴えて病院を訪れる方が増えていると聞きます。ファーストフード、炭酸飲料やドリンク類、菓子パン、菓子類、インスタント食品…。
これらの主成分はほとんど糖質や脂肪のみで、体を調整するためのビタミンやミネラルをほとんど含みません。このような食事が続いた結果、脚気を起こしてしまうようです。 今、子供が一番危ないといわれています。イライラはビタミンやミネラル不足によっても引き起こされます。だからといって、野菜ジュースを飲めば大丈夫という考え方も、どうでしょうか…?。食事はエサではありません。心を豊かにし、体を健康にする食生活。大切にしていきたいものです。
栄養士 木下美由紀