COLUMN
健康コラム

肥満について 

2024/10/15

この 100年間の技術の進歩は目ざましく、お陰で我々の生活は豊かになりました。しかし飽食と運動不足のため糖尿病、高血圧、高脂血症といった生活習慣病も激増しています。

肥満学会の勧告
日本肥満学会は昨年肥満の診断基準をBMI【体重(kg)/身長(m)2乗】26.4から25に引き下げました。肥満はさきの生活習慣病の危険因子であるばかりか、寿命が縮むことが分かってきたので、基準を厳しくし軽いうちに対策を立てる必要があるというのです。それでは肥満が解消することによってどれ程体調が良くなるかKさんの例をお話しましょう。

Kさんの場合
Kさん41才は公務員ですが、今年の職場検診の結果を見て驚きました。肝機能検査、血糖値、コレステロール値などが軒並み異常高値を示していたのです。ところが自覚症状がまるでないため病院へ行くのがついおっくうになり、盆明けにやっと検査表を持って来院しました。Kさんは出産後
に少しずつ太りだし現在身長は163cm、体重は81kg、BMIは30.5と完全な肥満体です。肝障害を表すGPTが189(正常値45以下)と高く、腹部を超音波で診ますと立派な脂肪肝です。コレステロールも261(正常値219以下)と高値、糖尿病のコントロール状態の指標で
あるHbA1Cが8.9%(6.5%以上は糖尿病)とかなり重症の糖尿病でした。
涼しい顔をしているKさんに、これから起こるであろう糖尿病合併症の恐さ、更に肥満、高脂血症、脂肪肝を合わせ持った場合の危険性について詳しくお話しました。合併症の出現していない今、治療を開始すれば、正常な人と同様な一生が送れると説明しますと、「やってみます。」と不安げに答えました。早速栄養士より1300キロカロリーの食事指導を受け、いかにカロリーを取り過ぎていたか納得して頂きました。最初は空腹感が強く食欲に負けそうになりましたが、途中から、食欲を抑える耳のツボに小さなハリを貼り付ける耳バリ治療と、全身状態を調和する漢方療法を併用することにより、みるみる効果が現れてきました。
一ヵ月後に来院した時の体重は76kgと5㎏の減量に成功。肝機能の数値はGPT40、コレステロール値も200といずれも正常化していました。糖尿病の方もHbA1Cは7.7%と改善傾向を示しましたので、Kさんは自信が出てきました。引き続きダイエットを続けて更に二ヵ月後、体重は73kg、HbA1Cは6.0%とほぼ正常値に入ることができました。Kさんは三ヶ月の努力の結果、体重が8kg減ると共に、糖尿病、高脂血症、脂肪肝という病気も良好なコントロール状態にすることに成功したのです。体型も誰が見てもスマートになり若返ったようです。Kさんも昔着ていた服が又着れるようになって大喜びです。春になるまでに70kgを切ろうと張り切っています。 

肥満はなぜ悪いのでしょうか
Kさんの場合、薬を飲むことなく食事療法を三ヶ月行っただけで、どうして病気の治療が出来たのでしょうか。インスリンというホルモンは御存知のように膵臓から分泌されて、体内の糖や脂肪の代謝に深く関わっています。Kさんのように肥満の人の膵臓からはインスリンは充分に分泌されているのですが、体内の多量の脂肪組織の影響で効きにくい状態になっています。この状態が続きますと糖尿病、高脂血症、高血圧を発病し易くなるばかりか、動脈硬化の原因となります。肥満の人にも心筋梗塞や脳梗塞など血管のつまる病気が多いのはこのためです。治療はいたって簡単です。余分な脂肪、特に内臓についた脂肪を落としスリムになればよいのです。脂肪が減るとインスリンの効き目はみるみる改善しますので、病気はまもなくコントロールされます。治るのではなくコントロールと言ったのは、いったん糖尿病などの生活習慣病が起こると残念ながら治ることはありません。油断して又不摂生をするとすぐぶり返してきます。ですから一生涯食養生を続けていく必要があるのですが、日頃私が指導しているダイエットのコツをいくつか挙げてみましょう。

ダイエットのコツ
①ダイエットと言えば、ごはんは半膳にしますが、おかずや間食の食べ放題という人が多いようです。ごはんのカロリーは脂肪分の入ったおかずよりずい分少ないですから、ごはんとお汁で空腹感を満たして、おかずを少な目にするほうがうまくいきます。勿論おかずも和食にするに越したことはありません。
②脂肪を減らすには運動は必要ですが、運動を過信してはいけません。一時間のウォーキングをした後で、シュークリームを一ヶ食べると体脂肪は増えてしまいます。又糖尿病や高血圧の人が、急に激しい運動を行うと反って危険な場合がありますので、運動は両刃の剣ということもお忘れなく。 

それでは皆様、今年こそはダイエットを成功させてください。

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